No.7 Paris,Tokyo

2018.09.02 Sunday 11:39
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    フランス旅行顛末記

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

    メトロでのハプニング

     

    Metro station 地下鉄駅

    Metro station 地下鉄駅

     

    2011年5月24日、朝の通勤ラッシュにもまれながら、モンパルナス駅から Ave.Hoche にある日本大使館を訪れた。帰国前日に発行される渡航証明書を受け取るためだ。黒人のセキュリティーがバッグを機械に通して受付に用件を告げ、やっと中に入ることが出来る。

     

    旅券課の大使館員は、パリ到着3日後にパスポートを盗まれ、盗難証明書を持って再発行の請求に訪れた時と同じ人だった。21ユーロを支払い問題なく渡航証明書を受け取り、明日の帰国の準備完了、ホッとする。

     

    相棒は昔パリに住んでいた頃、男だてらにバレエを習っていた。その先生の教室が近くにあったことを思い出し、それで訪ねることにした。以前教室があったバレエ劇場の隣にあるバレエ用品店の店主の話では、彼女は4年前にすでに亡くなったとのことだった。

     

    その足でアレジアへ。駅のすぐそばにエール・フランスの事務所があるので、そこでインターネット・チェックインを試みる。コンピュータはすべてフランス語だったが、聞きながら何とか出来て満足。 その後、近くのチーズ屋で日本に持ち帰るチーズを買おうと店に入った。すると、そこで事件発生。

     

    私達がチーズを店員と一緒に選んでいると、白髪頭のフランス人の男がウロウロしている。相棒が店員に「それじゃ、このチーズを」と指差したとたん、その男は相棒に「さわるな」と突然大声で叫んだ、もちろん触ってもいないし指も30センチは離れていた。

     

    濡れ衣を着せられた相棒は「何だ」と、その老人をニラミ返した。一緒にいた彼の妻は鎮めようと慌てていたが、彼は興奮したままで同じことを繰り返していた。一緒にいた店員のおにいちゃんも、いち早くそれを察して、マアマアと真中に入って仲裁してくれたので喧嘩にならずに済んだ。相棒によると、年取ったフランス人の中には東洋人嫌いの人がいて、こんな目にあうこともままあるそうだ。でもやはり気分が悪い。

     

    今回の旅は何処に行っても事件が起こる。気をとりなおしてベアトリスと12時半に会う約束をしたアレジア教会に向かう。今日は風が冷たい。教会前の石段に座って待っていると底冷えがする。早く来過ぎたので時間をもてあまし、仕方ないので暖かい教会の中に出たり入ったりしながら時間をつぶした。ベアトリスは時間通りやってきた。

     

    一緒に昼食を食べようと62番のバスに乗って、アレジア通りを真っすぐに Choisy に向かう。この辺りからチャイナ・タウンが始まるらしい。ベアトリスのお気に入りのベトナム料理を食べる。私とベアトリスはベトナム風丼を注文、米粉の上に野菜、肉、ネム(揚げ春巻き)と色々なものが乗っていて、その上にタレがかかっている。相棒はベトナム餃子、何だか透き通っていてベロベロとしている。見かけはまずそうだが、彼は美味しいと気に入っていた。

     

    飲物はベトナム・コーヒー、長いグラスに入った冷たいコーヒーで底にコンデンス・ミルクが沈んでいて、とても甘いコーヒーだ。初めてロスアンゼルスで飲んで以来ひさしぶりである、懐かしい。食後、陳氏兄弟が経営する大きなスーパーマーケットをベアトリスと訪れた。いろいろな中国食材やお土産品をみんなで批評しながら散策するのは楽しい。ベアトリスの両親はブルゴーニュ地方のディジョン出身だが、彼女はこの近所で育ったらしい。

     

    3時頃、中国カフェに入り、エクスプレッソを飲み、そこで別れた。ベアトリスから Porte de Vancennes までトラムに乗り、それから地下鉄に乗り換え、地下鉄 Gaite 駅まで行くと便利だと聞き、その通りに帰ることにした。

     

    Gaite 駅に着いた時、またまた事件発生。2人で階段を上り出口に向かっていると、そこに4人の地下鉄女検札官が勢ぞろいしていた。「切符、切符、切符を見せて」と大声で乗客に叫んでいる。パリの地下鉄は入場する時は機械にガチャッと切符を入れるが、出る時は日本のように切符は要らない。鉄製の観音開きの扉をバタッと開けるだけだ。

     

    そのためポケットに使用済み切符がたまる。今日で地下鉄に乗るのも最後ということもあり、何時もは捨てない切符をプラットホームにあるゴミ箱に捨ててしまったから、サア大変。2人とも切符を持っていない。女検札官が出口で検札をしている。パリではタダ乗りする人が沢山いるので、このようにして抜き打ちで調べているようだ。私達は切符を捨てたことを正直に言えば許してもらえると思ったが、その考えは甘かった。

     

    4人の検札官が同時に大声で「切符を持っていない者は、罰金として1人25ユーロ、2人で50ユーロ支払え」という。彼女達が喋るフランス語は判るのだが言い返す語学力がない。この時ほど、もっとフランス語を勉強しておけば良かったと思ったことはない。仕方なく私は、英語で「私達は電車をおりるまでは持っていたけど、下のゴミ箱に捨てちゃったのでゴミ箱を探すから待ってくれないか」と言ってみた。

     

    だが英語は、まるっきり通じないし聞く耳を持たないのでどうしようもない。私は、同じ言葉を繰り返し大声でがなりたてた。乗客達はけげんな顔で東洋人を横目で見て通り過ぎる。日本人の名誉にかけて汚名を挽回しなければならない。相棒が、それならプラットホームのゴミ箱に切符を探しに行くからと何度たのんでも、女達は「Non,Non」といって手をふり阻む。

     

    私達が逃げないかと心配して通せんぼをしているのだ。相棒は、その隙を見て階段を脱兎のごとく走り降りた。もちろん切符を探すためである。プラットホームには3つのゴミ箱があった。相棒はホームレスのようにゴミ箱あさりをするはめになった。相棒は昔覚えた、汚いフランス語で悪態をつきながらゴミあさりをしていた。

     

    そこへフランス人の若者が「どうしたの」と心配して聞いてくれた。相棒が事の成り行きを説明すると、彼は「君の気もちは良く判るよ、僕も一緒に探してあげよう」といってゴミあさりをして助けてくれた。相棒とフランス人の若者のまわりには輪が出来た。そのかいあって今日の切符が4〜5枚出てきた。上では検札官が「2人で50ユーロ払え」の一点張りで大声でがなりたてる。

     

    私も負けじと大声で「ゴミ箱を今探しているから、少し待ってくれない。もし見つからなかったら50ユーロ払うから、いい加減にダマれ」と叫び、フランス語と英語のバトルである。もう、うるさいったら、ありゃしない。先方は英語は判らない、その横にじっと立っていた部下の若い男が少々英語を判るようなので、「このやかましい女を黙らせてちょうだい。そして、私の言っていることを通訳して」と彼に詰め寄った。

     

    彼はモジモジとしながら上司の女検札官にボソボソとつぶやいた。そのお陰でやっと、その女は納得したらしく静かになった。15分ほどして相棒が、ものすごい形相で切符を持って帰ってきて、女検札官に渡した。すると「あっ、これが貴方達の切符ね」といってあやまりもせずに受け取った。これでやっと無罪放免となった。出口を出る時、私達はありったけの暴言をはきながら地下鉄を出た。最後までついていない、この旅は。

     

    気持がおさまらない私は、ホテルからクロードに電話をした。例のごとく、彼女は「ハハハ、私も仕事をしていた時、切符をなくしてしまって340フラン払ったことがあったわよ」と平然としている。 彼女は何時もおおらかだ。また、クロードは「最悪の場合、警察に逮捕されることもあるのよ」とも言っていた。次回からは絶対に切符は家まで持って帰ろう。

     

    相棒は若い時に暮らして大好きだったパリが段々嫌いになってきた、もう海外旅行はコリゴリだと落ち込んでいる。眠る前にBBCニュースを見ていると、先週噴火したアイスランド火山の煙がフランスに明日か明後日到着するとの不吉なニュース。ヨーロッパのフライトが500便もキャンセルされている。明日は帰国予定。あとは運を天にまかせて祈るしかない。

     

     

    やっと帰国

     

    La tour Eiffel エッフェル塔

    La tour Eiffel エッフェル塔

     

    2011年5月25日、いよいよ帰国の日。モンパルナス駅前からリムジン・バスに乗ってシャルル・ドゴール空港に向かう。バスは乗客で満員。運転手に国際線のエール・フランスまでと告げると、彼は「判りました」と返事をした。空港に到着すると、次々乗客が降りて行く。いよいよ私達が降りる国際線なので準備をして運転手に「ここなの」と何度か聞くと「ここだ」というので慌てて荷物を持って降りたのだが、なんと一つ手前のバス停で降ろされてしまった。仕方なく重い荷物をひきずりながらエール・フランスのカウンターまで行った。

     

    空港はアイスランドの火山噴火で500便以上のヨーロッパ線、国際線がキャンセルになっている。そのために国際線は閑散としている。カウンター前には時間が早いせいか乗客がぜんぜんいない。見回すと、カウンターの手前にセルフ・チェッキングのコンピュータが10台以上並んでいる。チェックインは昨日すでに済せてあるので、あとはボーディング・パス(搭乗券)を受け取るだけである。コンピュータ前に男女2人の係員が暇をもてあましていたので聞いてみる。

     

    「ボーティング・パスはカウンターで貰うのですか」と聞くと、女の係員は「いえいえ、お客様自身がコンピュータに入力して受け取って下さい」という。「えっ、私達一度もボーティング・パスを発券したこともないし、コンピュータはフランス語なので教えてもらえませんか」と頼んだが、彼女は「判らない時は呼んで下さい」とつれない言葉をのこして行ってしまった。

     

    私達団塊の世代は、コンピュータの言いなりになるのは抵抗がある。仕方なく2人で知恵を出し合い、やってみることにした。コンピュータで切符のチェックインが出来たのだから、きっと大丈夫だろう。 コンピュータの指示どおりにボタンを押すと、判らないフランス語が出てきた。いい加減に Oui(はい)と押すと1人200ユーロを別払いしろとの表示が出た。

     

    何で支払う必要があるのかが判らない。もう切符は支払ってあるし、座席も決まっている。そこで、先程の女係員を呼んで聞いてみると、よい座席に変更したい人は、200ユーロ支払えば変更出来ますという説明、しかし私達はこれ以上支払う気はない。

     

    彼女は仕方ないなという顔をして、チョコチョコとコンピュータを触り「Voilla」(どうぞ)といって2枚のボーディング・パスを出してくれた。私が航空会社に働いていた頃とは違い、今は乗客もコンピュータが出来ないと飛行機にも乗れない時代になった。特にコンピュータ世代に育っていない私達には生きにくい社会になって来た。

     

    ボーディング・パスには出発時間は時間通りと印刷してある。アイスランドの噴火の煙は幸運にもまだフランスの上空には到達していないのか。パスポートチェックを受けてゲートまで行く。ゲードはガランとしている。そこは日本の閉鎖的なゲートとは違い、ドーム型で天井が高く、外光の入る明るく気持ちの良いゲートになっている。

     

    テレビモニターに出発時間が刻々と映しだされる。エール・フランスのカウンターからゲートまでの距離があるので、航空係員や空港従業員用はセグウェー風のスクターの様な乗り物を使って空港内をあちこち走りまわっている。相棒は、その乗り物を羨ましそうに横目で見ながら欲しがっていた。

     

    そうこうしている内に出発時間が近づいて来た。しかし呼び出しもなく、乗客もパラパラと座っているのみ。やはり遅れそうだ。遅れても今日搭乗できれば御の字だ。思ったより早く飛行機は1時間半遅れで離陸した。機内は、やはり空いていてパリからの乗客は少なく日本人の客が多かった。

     

    重い荷物を上のコンパートメントに入れようと四苦八苦していると、何処からかともなく「助けましょうか」と日本語が聞こえた。振り向いても、それらしい日本人はいない。その声の主は隣に座っているフランス人の青年だった。彼は、Rennes(レンヌ)の出身で、以前少し日本に住んだことがあるとのこと。今、家族はスペインに住んでいると言っていた。

     

    今回は、日本語の検定を受けて仕事をしたいと日本語の猛特訓をしていた。機内でも一生懸命、教科書をだして勉学に励んでいた。離陸して何分かして機長のアナウンスがある。それによると今日のフライトはアイスランドの火山噴火の煙を避けるため、いつもの飛行ルートを変更し、ポーランド上空を迂回することになり、飛行時間は大幅に遅れるだろうとのことだった。

     

    しかし、旅は道づれ世は情け、パスポートを盗まれたり、地下鉄で女検札官につかまりそうになったりと色々な事件に巻き込まれたが、ケガも病気もせず日本に無事辿り着けたのは運が良かったと言うしかない。それにフランス人青年に助けられたり、泊まる予定のなかったクロードのところにお世話になったりとフランス人の情けを感じた。

     

    結局、飛行機は午前9時の到着予定が、大幅な遅延で私達が成田に到着したのは午後1時だった。4時間遅れである。乗れるはずのリムジン・バスはとっくに行ってしまい、次のバスは午後3時だと聞いて疲れがどっと出た。タクシーに乗るのはもったいないので、成田空港で時間をつぶしてやっと帰途に着いた。今回の反省として、次回から旅する時は方角をよく調べてから出かけることに決めた。

     

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    category:フランス旅行顛末記 | by:tanuchan1945comments(0) | -
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