No.2 Paris

2018.09.01 Saturday 15:04
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    フランス旅行顛末記

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

    Beatrice Douillet ベアトリス・ドゥイエ

     

    Beatrice Douillet ベアトリス ドゥイエ

    Beatrice Douillet ベアトリス・ドゥイエ

     

    2011年5月14日、今日は10時に友人のベアトリスに会う。モントーユの仕事場を訪ねる約束をした。ベアトリスは画家、グラフィックデザイナー、コラージュ、エコアートをこなすマルチなアーティストだ。

     

    1998年、ある雑誌の取材中、偶然パリで出会った。たまたまホテルへの帰り道ブラブラと歩いていると全面ガラス張りのアトリエが眼にとまった。中では女性が大きなキャンバスに向かって絵を描いていた。私の相棒はどちらかというと人見知りタイプなのだが、何故か外国に出かけると突然お喋りに変身する。そのお陰でガラス窓の外からずうずうしくも話かけ取材をさせてもらうことに成功した。

     

    その頃から彼女は人が捨てたガラクタ、古着などを使ってエコアートも試みていた。昨夜会ったクロードも一緒にベアトリスに会ってみたいというので、クロードの家に寄ってから3人で訪ねることになった。8時に起床、アレジアにあるクロード宅に向かう。待合せ時間が9時15分なのでバッチリ時間通りにアパート前に到着する。

     

    パリのアパートには、日本と違い鍵が何個も付いている。まず、外の分厚い、大きな扉を開けなければならない。そのためには、入口に付いているコード番号ボタンを押さなくてはならない。セキュリティー保護のため、この暗号番号は時々変更される。

     

    早速クロードが教えてくれたコード番号を押してみる。重い扉はビクともしない。何度押しても開かないので電話をかけてクロードを呼び出すことにした。フランスの公衆電話を使用するには、テレフォンカードが必要なので Tabac(バーでタバコや切手などを販売するキヨスクのような店)で購入することにする。

     

    遠方まで歩いてやっと店を見つけカードを買い、近くの公衆電話にかけ込む。時間がどんどん過ぎて気がきではない、短気な私はだんだん腹が立ってきた。でも、電話をかけないことにはどうにもならない。まずは、カードを入れる。するとフランス語で録音された冷たい女の声で訳のわからないことをベラベラ喋る。その喋りが終わってダイヤルしてみるが全然つながらない。

     

    何度しても同じなので一層腹が立ってきた。あとで落ち着いて聞いてみると、まず言語を選ばなければならないのである。女の声で説明していたのはフランス語か英語かを選んで下さい、フランス語は1を英語は2をと言っていたのである。言語を選んでから、やっとダイヤルできるのである。

     

    結果的に電話はつながらず、道を歩いている通行人に電話の使用法を尋ねてもラチがあかない。5月だというのに外はまだ寒く、今日は風が特に冷たい。この寒空、二人は外で立ちんぼをすることになった。こんなことをしている間にベアトリスの約束時間10時は、とっくにすぎてしまった。クロードも私達が時間通り来なくても、まったく気にならないらしく窓から顔を出す気配もない。

     

    もうお手上げ状態、仕方がないのでアパートから誰か住人が出てくるのを待つことにした。やっと住人が出てきたのは2時間も過ぎた頃だった。その住人はクロードの知り合いだったので、やっと入れてもらうことができた。時間はもう12時、クロードは「あれっ、あの番号で入れなかったのおかしいわね、ハッハッハ」と笑った。

     

    確認してみると、彼女がくれた番号は変更前の番号だった。急いでベアトリスに謝罪の電話をして、すぐにメトロの駅に3人で向かった。40分ほどで最寄り駅に着いた。モントーユ地区は芸術家が多く住んでいる所。駅を降りたとたんアフリカに迷い込んだのかと思うくらい、道を歩く人、商店の人、みんな黒人ばかりである。中にはアフリカの民族衣装をまとった黒人もいる。

     

    なんだかチョット緊張する。多分、このあたりは物価も安く生活しやすいのだろう。慣れていない私達は、背中に背負っていたバッグを胸のところに持ち替えた。ベアトリスのアトリエは、駅からすぐのところにあった。以前と違って、今は一人でアトリエを借りていた。久しぶりに会ったベアトリスは以前と余りかわっていなかった。

     

    抱き合って、フランス式にホッペにチュ、チュと二度キスをした。最後に会ったのが1998年からだから、13年も経っているのに何故か時間をまったく感じさせなかった。アトリエの中は様々な物で一杯だった。引出しには、色とりどりのビールの栓、ボタン、くぎ、豆など細々したものが整然と並べてある。絵具、ベンキ、筆、大工道具が所せましと置いてある。

     

    芸術論、ドイツでの個展のこと、ボーイフレンドのことなど、カフェ・エクスプレッソを飲みながら4人は英語とフランス語チャンポンで喋り、時間はあっという間にすぎた。3時間程話しこんで、また帰国するまでに会う約束をして別れた。

     

     

    カフェ探し

     

    Boulevad Peripherique ペリフェリック通り パリ環状道路

    Boulevad Peripherique ペリフェリック通り パリ環状道路

     

    2011年5月15日、パリに来て初めての日曜日。フランスの日曜日は、ほとんどの店が休みとなるので旅行者にとっては退屈である。今日は約束がないので朝ゆっくりして、遅い朝食を食べようとホテル近くのカフェに出掛けるが、すでにサービスは終わっていた。

     

    仕方なしに近所を歩いてカフェを探すことにした。高架線の Boulevard Périphérique(ペリフェリック通り/パリ環状道路)に沿って歩いていると、スポーツレジャーセンターの看板が見えた。小規模な施設だが、人がどんどん吸い込まれるように入っていく。この辺で営業している店は此処しかないので、時間潰しに寄ってみることにした。

     

    外観の印象より中はかなり広く、スポーツジム、ゲームセンター、ファミリーレストラン等があり、子供やティーンエイジャーで賑わっていた。お腹がすいていたので何か食べようとしたが、ろくなレストランもない。結局間違いのないファーストフードで朝食兼昼食のハンバーガーを食べた。

     

    何か損をした気がした。フランスまで来て何故ハンバーガーを食べなければならないのか、自分に腹が立った。帰りにデザートのケーキを二つ買ってホテルに戻った。このホテルは、日曜日になると一日中ドアロックがかかっているので、外出する宿泊客は事前に貰ったコード番号を押さなければ中には入れない。

     

    入口左側にあるコード板を押したが、ドアは開かない。アレッ、番号は間違っていないのに。ガラス越しに見えるホテル従業員を呼びつけた。従業員いわく、毎週金曜日にコード番号を変更するのだという。それなら、もっと早く言ってくれなきゃ。なんと気の利かないサービスの悪いホテルなのだろう。二度と泊まってやるものか。

     

    おまけに普通のホテルと違って、滞在中は誰も掃除にも来ない。自分で部屋備え付けの掃除機できれいにしなければならないのだ。テーブルを紙で拭いてみると、真っ黒で掃除した形跡がまったくない。きれい好きな私は、不満とストレスがたまった。

     

    相棒は、持ってきたノートパソコンを回線に接続しようとやっきになっていた。ホテルのカウンターと部屋を行ったり来たりしながら、アメフト選手なみの体格の黒人従業員にいちいち質問をしてはコンピュータをいじくりまわしていた。

     

    出発前、荷物が多くなるので、私は相棒に持って来るのを却下していた。にもかかわらず持参した手前、接続をしないと私に何を言われるか判らないので、目の下にくまを作りながら必死の形相になっていた。相棒はカメラマンという職業上、撮った写真をすぐに入力しておきたいのは判る。それは出来るとしても接続をしないとメールは送受信できない。何度も試みたが、ことごとく失敗して自信を失っていた。

     

    ホテル・カウンターの黒人大男は「君のコンピュータがフランス語か英語で書いてあれば助けてあげられるのにね」となぐさめられる始末。結局接続は出来ず諦めた。相棒はかなり落ち込んでションボリしていた。しかし、もっと落ち込む事件が待ち受けていようとは、その時は知るよしもなかった。

     

     

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    category:フランス旅行顛末記 | by:tanu-chan1945comments(0) | -
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