ポルトガルの窓から日本が見える No.4

2016.12.12 Monday

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    ポルトガルの窓から日本が見える

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

     

    Market 市場

     

     

    リスボアの取材先で

     

    あっという間にリスボアにきて2日が過ぎた。昨日は一日中事務的な仕事しか出来なかったので、今日はいろいろと取材をしなくては、スムーズに事が運ばず焦りを感じる。

     

    奥村さんは、昨日訪ねた「パステラリア・カタリーノ」で繁盛具合をカメラにおさめに出掛け、かれこれ3時間を経過、粘っこく取材をしている。カタリーノの主人・デビッドさんは、45歳というが10歳以上も老けて見える。彼は無愛想な男であったが、取材のお礼にTシャツを2枚あげると、満面に笑みをうかべた。

     

    「今日の昼食は軽く」と思ったが、結局、「パステラリア・カタリーノ」でしっかりと食べることになってしまった。撮影のためにバカリャウ(たら)と肉料理、それにコールドプレート、スープなど。またも散財。

     

    奥村さんが頑張っている間、私と春子は散策をしながら歩いているとインテリアの店に出くわした。店員は暇そうに店の中をノンビリと見回している。別件取材で日本からポルトガルへ渡ったといわれる椿の花をさがしていたので、その店員に聞いてみることにした。彼女の名前はワンダ、上品な中年女性である。

     

    彼女が言うには、ポルトガル北部のカステロ・ブランコに群生していて、ジャポネイラと呼ばれている事を教えてくれた。そして「リスボア市場も、ここから直ぐのところにあって面白いから行ってみるといいわ」と勧めてくれた。

     

    奥村さんの撮影も終わったので、私たちはワンダが教えてくれた市場に行くことにした。インテリアの店を出て、すぐ前にある大通りをつき当たると、白い大きな壁が見えた。そこがリスボア市民の胃袋を満たす市場である。3メートルの高さはゆうにあると思われる壁が延々と続く、まるで監獄のようだ。

     

    でも、中に入ると市場は活気に溢れ肉、野菜、花、チーズ、雑貨など、一番賑っているのが何といっても鮮魚売り場である。なぜか売り子はおばちゃんばかり、愛想よく私たちにアジやイカを見せつけて売りつけようとする。同じ建物の右側には小さなレストランがある。多分、おばちゃん達で昼は賑わうのだろう。

     

    私はトイレに行きたくなり捜し出す、あまり綺麗ではないが仕方がない。バタンとドアが勢いよくしまった。用を足してアッと気が付くと、なんとドアの内側に取っ手がないではないか、確かに入る時にはあったのに。そうなのだ、外側にはあるが内側には初めからなかったのだ。一度扉をしめてしまうと、もう中からは開けられない仕掛け。

     

    これこそ本当の雪隠づめ。そこで力まかせにドアを押してみるが、まったく反応なし。今度は「ドンドン、ソッコーロ(助けて)」とドアを叩いてみた。しかし、誰も応答してくれない。5分程経って、やっと魚屋のおばちゃんに救出される。ヤレヤレ、本当にお粗末の極み。

     

    昼からは、コンフェタリア(お菓子屋)の取材。取材候補として「スイッサ」と「ナショナル」という老舗の菓子店を現地で手に入れたガイドブックからピックアップ。「ナショナル」の方がこじんまりとしていて、日本人好みなので決定。

     

    「ナショナル」の主人は、4代目で元貴族ではないかと思われるほど品の良い紳士、いつもニコニコとして愛想がすこぶる良い。彼の名前はルイ・ヴィアナ。そして面白いことに彼から手渡された名刺には獣医と書かれていた。不思議に思って尋ねると「獣医になるつもりで学校へ行ったが家業を継ぐことになってしまった」と説明してくれた。どうりで店員たちが、彼のことをドトール(ドクター)と呼ぶわけだ。撮影もトントン拍子で、奥村さんも春子も大喜びであった。おまけに帰りに1人に1箱ずつ、1代目がフランスから持ち帰ったという三ヶ月型のフルーツケーキパンをいただき、何とお礼をいって良いものやら。ルイさん、ありがとう。

     

    この後、リスボア市内のバス、市電、ケーブルカー、メトロ乗り放題のパス「パッセ・トゥリスチコ」を買う。1人4日間で1350エスクード、せいぜい使わないともとが取れない。というわけで、早速37番カステロ行のバスに飛び乗り、サン・ジョルジュ城へと出発。

     

    モザイクのガタガタ道をでっかいバスが道一杯に走って行く。サン・ジョルジュ城に着くと、春子が城の上のギザギザになっている城壁まで登りたいと言いだす。今日のハードスケジュールで疲労困憊している上に、みるからに観光的過ぎる風景に奥村さんも私も気が進まなかったが春子のたっての願いもあって、やむをえず付き合うことにした。

     

    急な階段を何段も登ってたどり着いてみると、そこには何も無かった。春子は盛んに「ダマサレタ、ダマサレタ、松本城と同じだ」と訳のわからない事をブツブツと言う。この城は少々変わった城で、誰が飼っているのか、庭には孔雀がウロチョロ、真っ暗な石の部屋には、ニワトリやカラスが不気味に私たちを見つめる。

     

    9月末のポルトガルは、午後8時になっても陽が沈まず明るいので、気が付くともう11時になっている。そのかわり朝は7時になっても夜が明けない。

     

    今日9月23日、『パッセ・トゥリスチコ』の有効利用のため、エレトリコ(市電)に乗って終点まで行って見る事にした。28番のエレトリコはバイロ・アルトまで行く。それぞれのエレトリコの車両にはユニークなデザインが描かれている。私たちの乗った車両には、赤いベースにダリのようなどじょう髭を生やした男の絵が描かれていた。私は勝手に「ダリ電車」と呼ぶことにした。

     

    奥村さんと春子、そして私は、らくちんな「ダリ電車」でどんどん終点へと向かった。外はもう昼間とはうって変わって寒くなり、春子は「寒い、寒い」を連発する。仕方がないので、「ダリ電車」の始発駅のロッシオ駅まで戻り、昼に目を付けておいた中華料理店に飛び込む。

     

    私は、マッシュルームスープ(200エスクード)、奥村さんと春子は、卵スープ(220)エスクードをたのみ、牛肉のピリピリ、焼き飯、焼きソバなどを皆でオーダー。春子はそれでも足りないらしく、春巻きを注文しそうになり、私たちに「予算オーバー!!」と制されて取りやめた。春子は小柄で華奢なわりには食欲は旺盛である。

     

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