ポルトガルの窓から日本が見える No.34

2016.12.18 Sunday

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    ポルトガルの窓から日本が見える

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

     

    Plate & Artisan 絵皿と職人

     

     

    レドンドの岡本太郎

     

    広場を突っ切った消防署前に、陶器店がもう一軒あった。店内では、おじいちゃんがピーナッツの殻やタバコをいっぱい散らかした机の上に新聞を広げて読んでいる。面白そうなおじいちゃんなので、取材させてもらうことにする。彼は皿の絵師だと言うのだが、机には皿もなければ筆もない。「写真を撮れ撮れ」と勧められても、これでは何をしているのかもわからない。

     

    「今日は、お皿に絵を描かないの」と聞いてみると、「日曜日は仕事はしねえ」という。私たちは遠い日本からポルトガル取材をしに来たのだと告げると、急におじいちゃんは態度が変わり「メ ダ ピンセル」(筆をくれ)、「メ ダ ピンセル」と私に命令する。

     

    何事かと思ったら特別に絵を描くふりをしてやると言うのだ。続けて「メ ダ プラト」(皿をくれ)、とまたまた私を召使のように扱う。「まったく失礼なおじいちゃんだ」と思いながら彼の足元に目をやると、両足のない不自由な身体で杖までついているではないか。言葉はベランメー調で荒っぽいが気は良いおじいちゃんで、私たちのために「ヤラセ」をこれでもか、これでもかというくらい演じてくれた。

     

    彼は76歳、この仕事を始めて40年になるそうだ。「わしの皿は芸術じゃ」と自信満々。「二度焼きしているから割れんぞ」と我々が心配するほど、ハサミで「カンカン」と皿を割れんばかりに叩いてみせる。愛嬌のある芸術家じいちゃんだ。「芸術は爆発だ」の画家、岡本太郎さんと顔も仕種も似ている。どこの国にも、こういう人はいるものだ。気に入った皿を沢山買い込み、3人は満足してエボラに向かう。

     

    夕食場所を探してウロウロしていると、またも迷路にはまってしまい、ひと苦労。それでも何とかポウザーダが見えるところまで来た。すると、何やら良い匂いが漂ってくる。あたりを見回すと前方に大きな煙突があり、モクモクと近くの公園を包みこむほどの煙を出している。

     

    煙突の下にはレストランがあり、客が長蛇の列をなしている。中を覗いてみると、2メートル幅の巨大な炭火のグリルの上に、あじの開き状態の丸々一羽の鶏が50枚前後並べられ焼かれている。痩せの大食い春子は「キャーおいしそう」と叫ぶ。この店の煙は何キロ先にも届きそうだ。犬の多いこの地域では、近所のノラが匂いを嗅ぎ付けて集まり、ワンチャン・オンパレードになっても不思議ではない。 私たちの夕食は、勿論この「フランゴ・グレリャード」(ポルトガル風やきとり)に決定。やきとりは万国共通でおいしくて安い。

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