ポルトガルの窓から日本が見える No.33

2016.12.18 Sunday

0

    ポルトガルの窓から日本が見える

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

     

    Ceramic shop of Redondo レドンドの陶芸店

     

    レドンド

     

    激しい暴風雨も止み、静かな夜を取り戻した。お陰で熟睡、気もちのよい朝を迎えることが出来た。

    今日は久々の晴天、エストレモスからエボラへ向かう予定だ。そろそろ、この長旅も終わりに近づく。目的地エボラの手前にある町、レドンドへ立ち寄ることにする。

     

    車窓から見える風景は、相変わらず枯れ草に包まれた荒涼とした平原である。時折見えるコルク樫とオリーブの木々の間には、放牧された牛や羊がゆうゆうと草をはんでいる。この光景は、私が永年すんだカルフォルニアの砂漠にも似ている。

     

    やがて街道は傾斜を強めて丘へと登り、眼下には乳牛が眺められる。「奥村さん、あっ牛だ」と私が叫ぶと、彼は車を急停車させ一目散に崖っぷちへと突進、カメラを構える。と思いきや、10秒も経たないうちに真っ赤な顔をして大慌てで戻って来るではないか。

     

    「ハアハア」と息咳切りながら車に飛び乗る。「あ〜怖かった、牛を撮ろうと近寄ったら、2匹の牧羊犬が物凄い形相で僕に向かって来たんだ、噛まれるかと思ったよ」彼の顔は青ざめている。不審者が近づくと容赦なく攻撃するよう教育されていることは前記した通りだが、羊飼いが「私と一緒にいれば噛み付いたりしないよ」と言った言葉を思い出す。牧羊犬だけしか居ない時は注意が必要だ。

     

    ポルトガルの犬は、ほとんど放し飼いされている上に、どの犬も顔つきがポーッとして呑気な顔をしているので飼い犬かノラかの判断がつきにくい。だが、牧羊犬はどれも顔つきがピリリとして姿勢も良いので、はっきりと見分けることが出来る。

     

    ここから30分で陶器作りで有名な町、レドンドだ。今日は休日なので店は閉まっていると諦めていたのだが、逆に陶器屋さんにとっては稼ぎ時なのか開いている店が多い。画家・武本比登志さん宅で見たのと同様の皿も飾ってある。私も気に入っていたので、さっそく店に入ってみることにする。

     

    店には日本のように洒落たショーウィンドーはなく、皿が地面にむき出しに置いてあるだけだ。無造作に積み重ねられてはいるが、羊飼いや農作業など生活の匂いがする色彩かな皿を見ると、私たちが見て来たポルトガル情景にフィットして「なるほど」と納得させられるものがある。

     

    小皿は350エスクードから買えるのだから、ハンドメイドにしては格安だ。だが、素朴といおうか天真爛漫といおうか、商品の中には色がはみ出したのやら羊の目がずれて付いているやらで、注意して選ばないと抽象絵皿を買ってしまいそうだ。

     

    店内には灯もなく暗いので、目が慣れるまで待たないと絵皿を確認するのも難しい。入口には皺くちゃのおばあちゃんが杖をついて椅子に腰掛けているのだが、老眼で暗いところで物を見るのが不得手な奥村さんは、大分たってから「あっ、おばあちゃんが居る」と幽霊とでも出会ったようなギョッとした顔をしている。

     

    そのおばあちゃんは大声で「アメリア」と娘を呼ぶ。娘といっても、すでに50歳は越えているだろうか。「ボア・タルデ」(こんにちは)と挨拶すると、娘も「ボア・タルデ」と愛想よく応える。そして、珍しそうに私たち3人を見つめた。またしても「マカオから来た中国人か」との質問。「ソウ ジャポネザ」(日本人です)「ふーん」と残念な顔をする。

     

    私は「もしまけてくれるなら、何時でもマカオの中国人になりますよ」と言うと、おばあちゃんは「ワハハハ」と豪快に笑う。この店で皿を4、5枚買って次の店に移った。

    コメント
    コメントする