No.16 Vila Vicosa,Estremoz

2016.12.18 Sunday 15:01
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    ポルトガルの窓から日本が見える

     

    筆者の吉田千津子、カメラマンの奥村森、コピーライターの春子、

    3人でポルトガル42日間の旅、ポルトガルを通して日本を考察する

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

    露天掘りの大理石

     

    Church of Santo Antonio Pedra サント・アントニオ・ペドラ教会

    Church of Santo Antonio Pedra サント・アントニオ・ペドラ教会

     

    昨夜は酷い暴風雨、雨が窓から吹き込み床はビショビショ、ガラスは割れそうになるはでルームメイドを呼ぶ大騒ぎになってしまった。アンティークな雰囲気もよいが現実は厳しい。大変な部屋に泊まってしまったものだ。ルームメイドが持って来た雑巾も、あっという間に水膨れ。一段落しても風と雨が吹きつける音がやかましく、おちおち眠ってもいられない。旅行の折に必ず携帯する耳栓をして、やっと眠りにつく。

     

    翌朝、雨は止んだが相変わらず風は吹き荒れている。春子は、原稿の締め切り日が過ぎても書き上げられず四苦八苦、彼女はポウザーダでお残りとなった。私と奥村さんは近くの町、ヴィラ・ヴィソーザへ行くことにする。15世紀初頭、ブラガンサ公爵が広大な館をこの町に築き、天正少年使節が、この地で心温まるもてなしを受けたという歴史の街だ。

     

    この町に向かう街道沿いは大理石の産地として有名だ。採石場だろうか、ポコッポコッと白い大きな山がみえる。「そうか、あれが大理石の山なのだ」。ここの大理石は露天掘り、何トンもある四角い大理石の塊まりが無造作にゴロゴロと置かれている。大理石といえば日本では高価なもの、信じられない光景だ。土曜日ではあったが、幸いにも仕事をしている採石場があったので取材させてもらうことにした。

     

    ポルトガル産大理石は、主にイタリア、フランス、スペインなどに輸出されていて、訪れた採石場での一日の埋蔵量は150トン。「高級イタリア大理石といって販売しているけどね、ポルトガル大理石を加工したものが大多数を占めているんだよ」と採石場の従業員は語る。

     

    エストレモスからヴィラ・ヴィソーザ間には、至る所に白い山が点在する。まさに大理石の宝庫である。その恩恵を受けてか、ヴィラ・ヴィソーザの真ん中にあるプラッサ・レプブリカ(レプブリカ広場)は、石畳が大理石で埋め尽くされている。

     

    天正少年使節が訪れた教会、サント・アントニオ・ペドラ前の広場も大理石の綺麗なモザイクで飾られている。教会の裏側にも大理石で造られた可愛い小屋がある。近づいて見ると驚いたことに、そこは墓地。ポルトガルには家の形をした墓が多いが、きっと金持ちや貴族の墓に違いない。中には、日本のワンルームマンションより大きいものもある。

     

    日本の暗くて陰湿なイメージとは異なり、白い墓前には色とりどりの花や亡くなった人の写真が飾られ、墓石には故人を偲ぶ詩が刻み込まれている。そこに、家族が墓参に来ていた。「親戚のおばさんが数年前に亡くなってね、会いたくなると家族揃って訪ねて来るんですよ」と最年長の婦人が話してくれた。ポルトガルの墓地は賑やかで明るく、気も晴れ晴れとする。日本の墓地もこうあるべきなのに。これも豊富な大理石の演出あってのことか。

     

     

    ノラ犬攻撃と土人形

     

    Clay doll 土人形づくり

    Clay doll 土人形づくり

     

    天候は相変わらず晴れたり雨になったりの気まぐれ天気。昼食後、夕食用のパンとヨーグルトを確保する。ポルトガルは、土曜日は午後1時まで、日曜日は休みという店が多いので、買いそびれると絶食を余儀なくされ悲惨な目にあってしまうからだ。勿論、日本のように一日中開いている店などない。

     

    丘の上のポウザーダ近くで、またもやノラ犬攻撃にあう。車のタイヤにかみつかんばかりに跳びかかる2匹の犬、私たちは立ち往生、それを良いことに犬めは車の前に陣取り座り込んだ。犬好きの奥村さんは、ひき殺したくないので困り果てている。

     

    「ノラ犬だから可哀相だと思ってやったらいい気になって、ふとどき千万な奴め」と怒っている。私も犬好きだが、本当にひき殺してやりたくなった。10分ほどの立ち往生、やっと犬も根負けしたのか立ち去り無罪放免。ポウザーダに辿り着く。少し休憩を取って、再び取材開始。

     

    ポウザーダ前の小さな美術館がターゲットだ。一階には歴史的な土人形を中心に展示してある。美術館の離れには、アルリンド、アルフォンソ兄弟の土人形のアトリエがある。今日は、アルフォンソが一人で仕事をしていた。彼は土人形一筋に16年のキャリアを誇る人形師だ。技術習得は、すべて独学でやって来たという。

     

    彼は18世紀の古典的手法を継承して、絵具は自然から取れたアルミ、鉄、松ヤニなどを使う。人工の絵具と違って色あせしないのが特徴だ。アトリエの隅には、1×2メートルの材料として使う土を入れる囲いが作られ、中には栗色のきめ細かい粘土がいっぱい入っている。冬期は、寒さのため土を手に入れることが難しいので、夏期に兄弟2人で土と水を混ぜ合わせたものを足で踏んで十分にこね回して余分な水分を取り除く。それを、アトリエ内に保存して冬に備えるのだという。

     

    アルフォンソの作品は、宗教とアレンテージョ地方の風俗をテーマにしている。アトリエの棚には、「イザベル王妃」「羊飼い」「麦刈りの女」などの完成した作品が飾ってある。素朴で温か味のある土人形だ。「ヨーロッパ各地でも展覧会を開催しているんですよ」と言って自慢げに新聞の掲載記事を見せてくれた。

     

    しかし、こうした伝統芸術は若い人には好まれないようで、後継者もなく「自分たちで終わってしまうかもしれない」と彼は嘆く。若者が3Kの仕事を嫌い、カッコよいお金の儲かる仕事に魅力を感じるのは何処も同じらしい。

     

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