ポルトガルの窓から日本が見える No.29

2016.12.17 Saturday

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    ポルトガルの窓から日本が見える

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

     

    Shepherds 羊飼い

     

     

    セラ地方の井戸端会議と羊飼い
     

    この2日ほど体調を整えるために粗食で過ごしたので、私たちは再び元気を取り戻した。今日は、これからヴィゼウを出発してグァルダ、コヴィリャンを経由、カステロ・ブランコへと向かう。またしても道に迷ってしまったようだ。こうなると小さな町や村は地図にも載っていないので役に立たない。四苦八苦しながらも、人に道を何度も尋ねながら行くことにする。

     

    セイアと言う分岐点の町で道を聞いた時には、野次馬が沢山集まって「ああでもないこうでもない」とケンケンガクガクの討論になってしまった。井戸端会議のおじさん達は勿論のこと、兵隊さんまでやって来る始末。車を動かすこともできない。何と言うことはない、どちらの方向に行ってもコヴィリヤンに行けることが判った。

     

    私たちは気の向くままに方向を決め進むことにした。セイアからコヴィリャンに向かう山道は穏やかで、自動車もほとんど通らず快適。撮影も快調だ。山のテッペンでは、ドイツ人らしいバックパック姿の2人づれが雨に濡れながら歩いている。バスも通りそうにない道を、これから延々と次の村まで歩くのだろうか。さすがはヨーロッパ人、そのたくましさに私は驚愕した。

     

    山の中腹では、羊の首に付けられた鈴の音が「カランコロン」とノンビリと響き渡る。コヴィリャンは、ポルトガルで一番高い所にある町だ。岩山にビッシリとへばり付くように家が建ち並ぶ。その家と家を無数の坂道が糸のように結んでいる。この町にも特産の美味しいチーズがあると聞いていたので取材をしようと試みたが、あいにくチーズ作りのシーズンはすでに終わってしまったとのこと。諦めてカステロ・ブランコへと車を走らせる。

     

    途中、70歳と45歳の羊飼いに出会う。70歳のおじいちゃん羊飼いは「この仕事を50年やっているよ」と話す。パトロンに雇われて230頭の羊を一日中追って野山を歩き回っているのだそうだ。おじいちゃんに寄り添うように大きな犬と、これから牧羊犬としてデビューするという顔の毛がポアポアした青い目の子犬が愛嬌をふりまく。この可愛い子犬も羊に近づく不審者を撃退するために歯をむき出す逞しい犬に成長するに違いない。

     

    おじいちゃんとおじさんの手は乾燥した足のかかとのようで、とても固そうでヒビ割れている。雨が降っても、雪が降っても、どんなに辛くても毎朝4時から夜9時まで羊の世話やチーズ作りをするのが彼らの仕事だ。ポルトガル人は本当に働き者、顔にも手にも極上の年輪を感じる。

     

    カステロ・ブランコに近づくと平坦な道が続く。観光局でレジテンシャル(ペンション形式の旅籠)を4500エスクードで紹介してもらう。オーナーはインド人である。政情不安のアンゴラやモザンビークからポルトガルに移住して来るポルトガル語圏のインド人が大勢いる。両国とも、かつてポルトガル植民地だったのが起因している。

     

    そして、何故かペンションなどの宿泊施設を家族や親類で経営しているケースが多い。私たちが泊まった宿だけでも、3軒目である。奥村さんの体調は再び崩れ、食欲がない。一方、春子は元気いっぱい。「お腹がすいて、すいて」と奥村さんの気もちを察することもなく、無神経にはしゃぐ。世代の違いと言ってしまえばそれまでだが、この自己中心的神経とまわりの様子を気にも留めない図々しさは、たいしたものだ。

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