ポルトガルの窓から日本が見える No.25

2016.12.16 Friday

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    ポルトガルの窓から日本が見える

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

     

    Wagon & boy 荷馬車と少年

     

     

    山の中のブレーメン音楽隊

     

    午前8時、シャーベスに向けて出発。ヴィラ・レアルまで23キロのクネクネ道を走る。乗っている私たち、運転している奥村さんも気もちが悪くなるほどの急カーブだ。やっとヴィラ・レアルとホットしたのもつかの間、またまた曲がりくねった道が続く。一体どこまでクネクネ道が続くのだろう。

     

    シャーベスまでの道程は100キロに及んだが、結局まっすぐな道はほとんどなかった。すでに体調を崩している3人は、シャーベスに到着した頃には頭がボーッとしてヨレヨレになっていた。早速、観光局に行ってみると、リクエストしてあった取材の話など聞いていないというのだ。

     

    「100キロもの距離を車に酔いながら駆けつけたのに」私たちの連絡不足もあっただろうが、腹立たしくドッと疲れが出てきた。怒りが収まらない私たちはシャーベスにいるだけでも気分が悪くなり、すぐにラメゴに引き返すことにした。

     

    私たちの心は晴れなかったが悪いことばかりではなかった。ラメゴに帰る山道で「ブレーメンの音楽隊」そのままの父子に出くわすことが出来た。彼らはロバに荷車を引かせて、荷台のうえには家財道具一式に加えて一羽の茶色い鶏までも乗せている。

     

    荷車に細い紐でつながれた黒い子犬が雨でびしょ濡れになり、寒さのためブルブルと身体を震わせている。ロバも急な坂道を登るたびに垂れ下がっているたづなが擦れるらしく、わき腹が赤剥けて血がにじみ出ている。茶色の穴だらけのセーターを着た8歳ぐらいの男の子は、傘もささず雨の中をゆっくりゆっくりと3頭の馬を引いて歩く。

     

    後方には父親がもう1頭の馬を引いている。その馬は大切な商品なのだろうか、透明ナイロンシートが背中にかけられている。ビュンビュンと通り抜ける車を避けるように、彼らはモクモクと急な山道を目標の村へ向けて歩き続ける。

     

    写真を撮らせてもらったお礼に、私が持っていた日本製のワッペンを男の子にあげると、恥ずかしそうな笑みを浮かべ父親に嬉しそうに見せる。その様子は貧しいながらも素朴で信頼の糸で結ばれた父と子の姿に見え、日本の消え去った懐かしい風景として深く心に残った。

     

    今日でラメゴともお別れ。お世話になったジョルジ家族を夕食に招待することにした。だが不覚にもジョルジに先手をうたれ、逆に招待されることになってしまった。車に乗せられて着いた先は、なんとジョルジの家だった。彼の家は中古で買ったマンション、3寝室、2バス、台所、居間で構成され、こぎれいで住み易そうな住まいである。

     

    数年前に400万円ぐらいで買ったそうだが、いまでは1千万円以上出さないと買えないだろうと彼は言う。日本なら、この値段でこのサイズの物件はとうてい買えないだろう。子供2人の4人家族で、夫人のマリア・ジョアンは教育熱心なお母さんだ。思いもよらぬポルトガル家庭訪問、マリアの美味しいホームメイドの夕食とワイン、BGMはポルトガル音楽、今日起こった嫌なことも、みんなふっ飛ばしてくれる。「ジョルジいろいろお世話になりました、ありがとう」 

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