ポルトガルの窓から日本が見える No.16

2016.12.14 Wednesday

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    ポルトガルの窓から日本が見える

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

    Small boat アヴェイロ運河のモリセイロ(小舟)

     

     

    子豚地方と狂犬

     

    ブッサッコを出発してアヴェイロへ向かう。メリャードという小さな町にでる。この町はコインブラとポルトの分岐点に当たり、私たちは、これからポルト方面に進み、途中のアヴェイロに立ち寄る予定だ。道路の両側には、屋根に大きな煙突のあるレストランが建ち並び、モクモクと噴き出す煙があたり一面を包む。どのレストランも日曜日とあって長蛇の列、ワイワイと賑わいお祭り騒ぎだ。

     

    どう見ても、この町の規模には不釣合いな光景だ。丁度、昼時なので、そのお祭り騒ぎに加わることにした。外で待っている間、イライラするポルトガル人は1人もいない。みんな楽しそうに話に夢中になっている。レストランの中は戦場さながら、ウェイター達がコマネズミのようにテーブルとテーブルの間を行ったり来たり。食事を終えた客は、長さ80センチ以上もあろうかと思われる紙箱をかついでいる。「あれは何だろう」私はぼんやり眺めていた。

     

    混んでいるので、なかなか注文を取りに来てくれない。随分待たされたあげく、やっとのことで魚介類のオジヤ風とイカのグリルを注文、ホッとする。ところがまたしても注文したものがなかなか来ない。他の人の注文は直ぐ来るのに、不思議に思い観察してみると、ほとんどの客は子豚の丸焼きを食べているではないか。

     

    そうなのだ、ここは子豚地方。こんな所でシーフードを食べる田舎者はいない。私たちは場違いな料理を注文した変な東洋人になってしまった。3人で苦笑。そして、先ほどの紙箱の中味は子豚の丸焼きと判明、テイクアウト用のものだった。それにしても皆うやうやしく持つ姿には、まいった、まいった。

     

    いよいよアヴェイロ。アヴェイロは日本の大分市と姉妹都市縁組をしている。今日の宿はホテル・アルカダ、町の中心にあるロータリーに面している。部屋の窓からロータリーを見下ろすと、中央にオワンをひっくり返したような形の木々が茂り、夕刻には、そこをネグラにする無数の鳥たちで喧しい。

     

    町の中心部には、運河が流れている。ベニスのゴンドラを模した色彩豊かな「モリセイロス」と呼ばれるボートが2、3隻浮かんでいる。以前に資料で調べておいた、牛が曳く地引網を見ようと海岸まで行ってみる。だが、今は10月、夏も終わり海が荒れるので今年はもう終わってしまったとのこと。残念。

     

    帰途道を間違え、うっそうと茅の茂った原っぱに出てウロウロしていると、突然、どこからともなく数匹の野犬と化した野良犬がもの凄いけんまくで歯をむき出し、私たちの車に突進して来た。その姿はライオンにも似て、さながらアフリカのサバンナに来ているようだった。私たちは車の窓をしっかりと閉め発進しようとするが、犬たちが前方を塞ぎなかなか発進できない。まかり間違って車のガラスでも割って中に飛び込んでこようものなら、この状況では狂犬病にもなりかねない。私たちに緊張が走る。やっとのことで犬たちを振り切り命からがら、その場を抜け出すことができた。この時ほど車が有難く思えたことはない。 

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