ポルトガルの窓から日本が見える No.12

2016.12.14 Wednesday

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    ポルトガルの窓から日本が見える

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

     

    Meadow in Serradealcobaca  セラ・アルコバッサの牧場

     

     

    ポルトガル生活事情

     

    言い忘れていたが、カルダス・ダ・ライーニャからアルコバッサへ行く途中にう村を通った。セラとはポルトガル語で丘と言う意味だ、その言葉どおりセラ・アルコバッサは丘の中腹にあった。家々がポコッポコッと点在する過疎の村、グニャグニャ道で急停車。そこは一軒の農家前、1台の旧式トラクターを素朴で澄んだ目をした20歳位の青年が整備、その脇でもう1人、前歯が2本しかないおじいさんが青年と話し込んでいた。

     

    おじいさんは74歳で「わしの母親は100歳と5ヶ月まで生きたんじゃ、すごいじゃろう」と得意満面、そして今は年金暮しで毎月、2万エスクード(2万円足らず)貰っていると話してくれた。おじいさんのお喋りは際限なく続く、余り相手ばかりもしていられない。この家の主人に挨拶すると「フィゲレイドです」と名乗った。

     

    フィゲレイド家は、夫妻と2人の息子、そして、おばあちゃんの5人家族である。おばあちゃんは、黒装束で身をかため椅子に座り、皆の動きを観察している。おばあちゃんはポルトガル女の典型、丸々として元気そのもの。「ポルトガルの田舎でも都会に行きたがる若者が増えて過疎化が進み、日本と同じ悩みを抱えている」と彼女は語る。幸運なことに、2人の息子は田舎に残り両親と一緒に農業をしたいと望んでいるようだ。

     

    裏庭は足の踏み場もないほど牛や馬の糞でいっぱい、スゴイ臭い、おまけに蝿はブンブンと飛び回る始末。母屋前の庭には、ニワトリと2匹の黒猫が仲よく一緒に寝そべっている。猫はネズミを取るからと重宝がられ、藪の中や庭など、そこいらじゅうに徘徊している。

     

    ポルトガルの犬にしては珍しく、綱に繋がれた2匹の犬が見知らぬ東洋人に向かって吠えまくる。庭に踏み入れると靴が糞まみれになるほどのぬかるみ、それでも好奇心から奥の牛舎を覗くと真っ暗な小屋に黄色い牛が一頭、餌を食べている。2本歯のおじいさんは、この牛を買おうと見に来たのだ。

     

    彼は「この牛は年をとっておるのでダメじゃ」と小声で私に耳打ちをした。そして間もなく主人に別れを告げて去っていった。私たちも失礼することにした。私が「田舎暮らしは泥まみれ、しかも臭くて大変だわ」と呟くと、「これが本当の人間の生活さ」と奥村さんは言い放った。

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