No.1 Tokyo,Lisboa 

2016.12.11 Sunday 20:33
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    ポルトガルの窓から日本が見える

     

    筆者の吉田千津子、カメラマンの奥村森、コピーライターの春子、

    3人でポルトガル42日間の旅、ポルトガルを通して日本を考察する

     

    文:吉田千津子 写真:奥村森

     

     

    まえがき

     

    Tower of Belem ベレムの塔

    Tower of Belem ベレムの塔

     

    私は短大を卒業してからすぐに、父が仕事で駐在していたブラジルに日本最後の移民船「アルゼンチナ丸」に乗って神戸港からひとり人旅に出た。1968年初春のことである。「父を慕って」というほど、私は父への思いはなかったが、その頃の私は「どこでもよいから、外国に行ってみたい」という気もちからだった。

     

    旅は約50日、1ドル360円の時代であった。船代を稼ぐために大学を卒業してから1年間勤めをして資金を蓄え、父が「来るな」と反対するのを押し切っての旅だった。私が最初に住んだブラジルの町『ポルト・アレグレ』(ポルトガル語で楽しい港の意)には、日本人がほとんどいないことも幸いして、ポルトガル語を使わなくてはならず、約2年の滞在で言葉が上達したばかりか性格もブラジル人になってしまった。気さくで底抜けに明るいブラジル人気質が私をとりこにした。

     

    その後、一時帰国したが「またブラジルに帰りたい」と思うようになり、ヴァリグ・ブラジル航空のスチュワーデスに応募した。その結果、ブラジル・リオデジャネイロとアメリカ・ロスアンゼルスでの生活を約20年間することになる。

     

    1989年に帰国した私は、テレビ制作プロダクションに勤務する。日本企業の中では自由な会社だったが、束縛されて個性がなくなっていく自分が恐ろしくなっていった。「日本人なのに日本人でない自分」自信を失ない始めていた。それは今にして思うと、日本の閉鎖的社会構造が私を悩ませていたのである。

     

    ある日、心配してくれた友人が海外で暮らしたことのあるカメラマンの奥村森さんを紹介してくれた。ほどなく、私は彼のオフィスに勤めることになった。海外経験からして国際派だと思っていた奥村さんだが、意に反して折り紙つきの典型的日本人だった。

     

    彼はひとの気もちを大切にするあまり、結果的には人に騙され自ら墓穴を掘ることも度々であった。私が入社した頃、彼は父親の莫大な相続税の処理で悪戦苦闘していた。1993年には相続税も3年目を迎え、疲労困憊して旅どころではなかったが、気分転換もあってか「仕事を作って取材旅行に行こう」と言いだした。

     

    私は「ブラジルを植民地としたポルトガルとは、どんな国なのか」と以前から興味があったので喜んで参加することにした。取材に当たり、奥村さんは撮影だけで手一杯になるのでライターを探すことにする。オフィスに時々遊びに来ていたコピーライターの春子に話すと彼女も「是非一緒に行きたいと」乗り気だ。

     

    こうして、奥村さんがカメラマン、春子がライター、そして私が通訳とコーディネイターとしてポルトガル3人旅が始まった。

     

     

    東京からリスボアへ

     

    002 Scenery through the window ペンションの窓から望む風景

    Scenery through the window ペンションの窓から望む風景

     

    9月20日、いよいよ念願のポルトガル取材旅行が始まろうとしている。午前8時に奥村さんと世田谷にあるオフィスを出て西新宿のリムジンバス乗り場へと向かう。心配していた交通渋滞もなく思ったより早く西新宿に到着、同行予定のライター・春子を待つ。待ち合わせするといつも遅刻常習犯の彼女だが、珍しいことに早く来ている。

     

    予約した前のバスに空席があったので時間を早めて出発する。午前10時成田着、予定時刻よりかなり早く着いたので、朝食をとって時間をつぶす。搭乗ロビー内の何でもありのレストランに3人で入り、友人のヴァリグ・ブラジル航空に勤務している未明さんを呼び出す。ついつい話に華が咲きすぎて時計を見るとボーディング時間が過ぎている。急いで出入国管理局へと向かう。

     

    出国管理局は大混雑で前になかなか進まない。ボーディングはすでに始まっている。エールフランスの地上係員に急がされ、やっと飛行機へ。私たちのために出発を遅らせてしまった。「ごめんなさい」。

     

    フライトはエールフランス275便、12時45分離陸。エールフランスのはからいでビジネスクラスの座席を提供してもらう。空いていたので2座席を一人で占領、みな満足、満足。

     

    離陸後すぐに昼食、春子はポルトガルに行くのだからとポルトワインを注文する。ところが相当甘いとみえ、閉口している。奥村さんはかっこよく赤いカンパリソーダ。昼食後3時間ほど睡眠をとる。機内温度は良好で鼻も乾かない、気分爽快。搭乗して6時間半、そろそろモスクワ上空にさしかかる。各キャビンの正面にモニターがあり、現在地、気温、飛行距離が刻々と伝えられる。乗客は皆リラックスしている。

     

    奥村さんは素早く非番の若くて可愛いスチュワーデスに目を付け、観察開始。「おばけが頭に付ける三角巾を膝に付けているよ、見てみて」と一人で面白がっている。後部座席には、とうの立った非番のスチワ−デスのお姉さまが3人分の座席を占領してサンマのように長くなり読書にふけっている。観察が終わると、奥村さんは寸暇を惜しんで眠りを貪る。

     

    春子は、何やら調べ物をしている。ウトウトしていると「あと一時間でパリ」とのアナウンス。目を覚ました奥村さんは、ことの他マメに食べ残したパンやサンドイッチ、砂糖までも酔い袋に詰め込んで飛行機から降りる準備に余念かない。

     

    現地時間17時10分前、パリ、シャルル・ドゴール空港着。空港で乗り継ぎのため1時間待たなければならないので、3人でロビー内をウロウロする。パリ在住経験のある奥村さんが、懐かしんで「シトロン・プレッセ」(レモン水)を飲もう」と勇んでバーに行ってみるが、ありきたりのジュースしかなく断念する。

     

    19時15分、エールフランス1224便はリスボアに向けて出発。ボーイング737の機内はポルトガル人と日本人の団体客でほぼ満員。後方ではポルトガル人が大声で話している。奥村さんはアイマスクを付けて再び眠り、春子はコンタクトが乾いたと言って目をしばしばさせている。食事が離陸してすぐに出る。奥村さんは「また食事か、お腹すいていないのに」と言いながらもテーブルをセットして用意をしている。あとで食べられそうなものは袋に詰めてカバンに入れる。

     

    午後10時、リスボア着、気温25度、思ったよりも暖かい。空港で20万円をエスクードに両替する。100円=158エスクード、コミッション2千エスクードと税金180エスクードを差し引いて31万4千780エスクード也。バッグがお金でパンパンだ。予約してある宿「ペンション・ナザレ」へ向かうためにタクシー乗り場へ行く。同じ便で到着した乗客で長蛇の列が出来ている。

     

    15分程待って順番が来たのでホットしたのもつかの間、タクシー運転手が「スーツケースがトランクに全部入らないから乗せられない」と言う。「入りきらないスーツケースは座席に置けば良いではないか」と私が食い下がるが、彼は「タクシーの規則でスーツケースは座席には置けない」と言い張る。

     

    私と運転手は10分程公衆の面前で乗せろ乗せないで大口論になる。日本人対ポルトガル人の対決だ。怒った運転手はスーツケースをポンポンと道路の真ん中へ投げ出して、乗車拒否して去って行った。怒りたいのは、こっちの方だ。

     

    3人の疲労も極度に達し、ヨロヨロと大きなスーツケースをひきずりながら元の列に入る。「捨てる神あれば拾う神あり」、ことの成り行きを見ていたタクシー運転手が「ノン・テン・プロブレマ」(大丈夫だよ)とトランクに入らないスーツケースを車の屋根に乗せ、その場しのぎの細い紐で縛りとめる。

     

    「ペンション・ナザレ」への道すがら運転手は猛スピードで飛ばす。荷物が屋根から落ちるのでは、と気がきではない。だが無事到着、料金が1040エスクードのところを1500エスクード支払う。荷物料金として50パーセント増しに支払ったので運転手も上機嫌である。「ボア・ヴィアージェン」(良いご旅行を)と言って立ち去った。

     

    時間は午後11時をまわっている。ペンションが用意してくれた部屋は5階、ところがエレベーターは4階まで。5階へは重たい荷物を持って螺旋階段で登るしかない。「一難去って、また一難」、私たちは最後の力をふりしぼって部屋にたどり着いた。ポルトガルに着くやいなや、ラテン気質の洗礼を受けてしまった。

     

     

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